【脂肪幹細胞治療の論文が発表されました】―Dr齋藤の学会レポート
2020年06月18日(木)
私たち、お茶の水セルクリニック、表参道のアヴェニューセルクリニック、東京大学整形外科の3施設は、共同で変形性関節症に対する自己脂肪幹細胞の関節内注射療法について研究を実施しています。
この度、東京大学整形外科の大学院生・樋口淳也先生が、脂肪幹細胞治療による症状の改善と、治療前のMRI所見との関連について研究を行い、その成果が日本再生医療学会の機関誌「Regenerative Therapy」に掲載されました(Higuchi J, Yamagami R, Matsumoto T, Terao T, Inoue K, Tsuji S, Maenohara Y, Matsuzaki T, Chijimatsu R, Omata Y, Yano F, Tanaka S, and Saito T. Associations of clinical outcomes and MRI findings in intra-articular administration of autologous adipose-derived stem cells for knee osteoarthritis. Regen Ther. 14:332-340, 2020. doi: 10.1016/j.reth.2020.04.003)。
脂肪幹細胞治療は、1回の関節内注射で長期間にわたって症状が和らぐ患者さんが多い一方、効果の程度は個人差が大きいことが分かっています。脂肪幹細胞治療でどれくらい関節の痛みが楽になるか、できれば事前に予測したいですし、効果の出やすい患者さん、出にくい患者さんの特徴が分かれば、私たちにも患者さんにも非常に有益です。
この研究では、MRIのデータから、治療前の関節内の細かい構造物の状態をスコア化するとともに、治療前、治療後1,3,6カ月時の痛みのスコアの変化を調べ、関連を解析しました。すると、関節軟骨のすり減り、骨棘と呼ばれる関節周囲の骨のでっぱり、関節軟骨の奥の骨の状態が、症状の改善に関係しており、いずれも変性、変形の程度がシビアな方ほど症状改善の幅は大きいことが分かりました。精確な予測法の確立はまだこれからですが、関節の状態が悪い患者さんでも脂肪幹細胞治療の効果は十分期待できると考えられます。
私たちは、このような患者さんのデータ解析だけでなく、より治療効果の高い脂肪幹細胞の調整法の開発や、コストダウンを目指したオリジナルの細胞培養液の開発、また脂肪幹細胞が関節痛を改善する分子メカニズムの解明などに取り組んでおり、より良い脂肪幹細胞治療をお届けできるよう、今後も頑張って参ります。
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