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大腿骨頭壊死症は早期発見が重要|骨内への細胞治療とMRI診断について

2026年09月25日(金)

こんにちは。お茶の水セルクリニック院長の寺尾です。

前回に引き続き、大腿骨頭壊死症について、専門的に治療に取り組まれている黒田先生にお話を伺いました。

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前編では、大腿骨頭壊死症とはどのような病気なのか、ステロイドや飲酒との関係、これまで行われてきた骨切り術や骨移植、骨穿孔術などについてご紹介しました。

今回はその続きとして、実際に骨の中へどのように治療を行うのか、そしてなぜ早期発見が重要なのかについて詳しく伺っています。

壊死した場所へピンポイントで治療を届ける

大腿骨頭壊死症に対して骨の中へ細胞などを投与する場合、大切なのは、壊死している場所へ正確に届けることです。

当然ですが、正常な骨の部分に治療を行っても、目的とする場所には届きません。
そのため、壊死している範囲を確認しながら、狙った場所へ正確に穴を開ける必要があります。

通常、このような手術では「透視」と呼ばれるレントゲン画像を確認しながら位置を合わせていきます。
ただ、何度も位置を確認しながら針を進めると、その分だけ手術時間も長くなりますし、術者側の放射線被ばくについても考える必要があります。

そこで黒田先生のところでは、壊死した場所を狙いやすくするためのターゲットデバイスを開発して使用しているとのことでした。

ターゲットデバイスで位置を決める

このターゲットデバイスの先端には、レントゲンで確認できる金属が入っています。

正面と横方向からレントゲン画像を確認し、壊死した範囲に位置を合わせたうえで、そこを目標にして骨へアプローチします。

通常であれば、「少し位置が違う」「もう少しこちら」と何度か調整しながら進めることがありますが、このデバイスを使うことで位置を決めやすくなり、手術時間の短縮につながっているとのことでした。

黒田先生のお話では、傷も1cm程度と小さく、出血も少なく済むケースが多く、手術そのものは短時間で終わることもあるそうです。

大きく切開して行う従来の関節温存手術とは、かなりイメージが違うと思います。

骨の中にはどのように細胞を入れるのか

治療では、大腿骨に数mm程度の穴を開け、専用の器具を通して壊死した部分へアプローチします。
そこから細胞などを投与し、必要に応じて人工骨なども併用しながら、骨が修復していく環境を整えていきます。

前編でご紹介した骨穿孔術は、骨に穴を開けることで出血を起こし、患者さん自身が持っている修復能力を利用する治療です。

今回のお話は、そこへさらに細胞などを加えることで、骨の中の修復環境をより良くできないかという考え方になります。
大腿骨頭壊死症は、関節の表面だけの病気ではなく、骨の内部で血流障害や壊死が起きている病気です。

そのため、関節内へ注射するだけではなく、問題が起きている骨の内部へ直接アプローチするという考え方が出てきます。

日帰りで行われるケースも

Rejoint Clinic Dr.Kでは、この治療を日帰り手術として行っているとのことでした。

麻酔は脊椎麻酔を基本とし、麻酔科の専門医にも入ってもらいながら安全に進めているそうです。

手術後は麻酔が十分に覚めたことを確認し、歩いて帰宅される方もいらっしゃるとのことでした。

もちろん、術後の痛みには個人差があります。特に最初の数日は痛みが出る可能性があるため、事前に説明を行い、必要に応じて鎮痛薬を使用しながら経過を確認していきます。

その後、1週間程度で再診し、状態を確認していく流れになっています。

大腿骨頭壊死症の関節温存手術というと、大きな手術や長期間の入院をイメージされる方も多いと思いますが、こうした低侵襲な治療が行われるようになってきていることは、とても興味深いと感じました。

大腿骨頭壊死症は早期発見が難しい

今回のお話の中で、特に重要だと感じたのが早期診断の難しさです。

ステロイド治療を受けている方の場合には、内科や膠原病内科の先生が大腿骨頭壊死症の可能性を考え、早い段階でMRIを撮影することがあります。

一方で、習慣的な飲酒などが背景にある場合、自分が大腿骨頭壊死症になる可能性を考えることはほとんどありません。
そのため、股関節が痛くなってから医療機関を受診し、検査をした時点ですでに大腿骨頭が潰れ始めているケースもあるとのことでした。

大腿骨頭壊死症は、初期の段階ではレントゲンだけではわかりにくいことがあります。

そこで非常に重要になるのがMRIです。


MRIでは、まだ大腿骨頭の形が大きく崩れていない段階でも、骨の内部に起きている変化を確認できることがあります。
黒田先生も、初期診断ではMRIが非常に有効であり、早い段階でMRIを撮影することが大切だと話されていました。

「痛みが少ないから大丈夫」とは限らない

大腿骨頭壊死症では、症状の強さと病気の広がりが必ずしも一致しないことがあります。

まだそれほど強い痛みが出ていなくても、MRIで確認すると壊死している範囲が広い場合があります。壊死の範囲や位置によっては、その後大腿骨頭が圧潰していく可能性が高くなるため、痛みが軽い段階で見つけることには大きな意味があります。

大腿骨頭が潰れてしまってからでは、選べる治療が大きく変わります。
反対に、骨の形がまだ保たれている段階で発見できれば、関節を温存する治療を検討できる可能性があります。
そのため、大腿骨頭壊死症では「痛くなってから治療する」というより、潰れる前に見つけられるかどうかが非常に重要になります。

ステロイド治療歴を確認することも大切

診察では、股関節の痛みだけを見るのではなく、これまでどのような治療を受けてきたのかを確認することも大切です。
特に、ステロイドを使用した経験があるか、習慣的な飲酒があるかといった情報は、大腿骨頭壊死症を疑うきっかけになります。
今回の対談では、新型コロナウイルス感染症で肺炎を起こした際に、ステロイド治療を受けた方についても話題になりました。

患者さん自身は、入院中にどの薬を使ったのか詳しく覚えていないこともあります。
そのため、「以前入院したことがある」「肺炎で治療を受けたことがある」といった場合には、そのときステロイドを使用していたかどうかまで確認することが大切だという話でした。

股関節や足の付け根に痛みがあり、過去にステロイド治療を受けた経験がある方は、一度医師にそのことを伝えていただくとよいと思います。

「診断されたのに、治療することがない」と言われることも

大腿骨頭壊死症の患者さんから、「大腿骨頭壊死症と診断されたけれど、今は特に治療することがないと言われました」という話を聞くことがあります。

これは医師が何も考えていないという意味ではありません。
これまでの標準的な治療では、早期の大腿骨頭壊死症に対して行える治療が限られていたという背景があります。
骨切り術や骨移植といった関節温存手術はありますが、比較的大きな手術になり、入院やその後のリハビリにも時間がかかります。

働き盛りの20代、30代、40代の方にとって、数週間から数か月仕事を休んで治療を受けることは簡単ではありません。

そのため、病気が見つかっていても経過観察となり、「大腿骨頭が潰れて痛みが強くなったら人工股関節を考えましょう」という説明になることもありました。

医療者側からすると合理的な判断であっても、患者さんからすれば、「壊れていくのを待つしかないのですか?」と感じてしまうのも当然だと思います。

潰れる前にできる治療が増えてきた

そのような中で、骨穿孔術に細胞治療などを組み合わせる方法が出てきたことには、大きな意味があると思います。

もちろん、すべての大腿骨頭壊死症に適しているわけではありませんし、この治療を行えば必ず大腿骨頭の圧潰(あっかい)を防げるというものでもありません。

それでも、これまで「経過を見るしかない」とされていた時期に、治療を検討できる可能性が出てきたということは、患者さんにとって一つの選択肢になります。

そして、その選択肢を検討するためにも、やはり重要なのが早期診断です。

大腿骨頭が大きく潰れてしまってからではなく、骨の形が保たれているうちに状態を把握する。
そこから、その方にどのような治療が適しているのかを考えていくことが大切です。

股関節や足の付け根に痛みがあったら

大腿骨頭壊死症は、一般の方にとってまだそれほど馴染みのある病名ではありません。
比較的若い方の場合、「少し股関節が痛いけれど、そのうち治るだろう」と考えてしまうこともあると思います。

ただ、股関節や足の付け根の痛みが続いていて、ステロイド治療歴や習慣的な飲酒などの背景がある場合には、一度整形外科で相談していただくことをおすすめします。
必要であればMRIを撮影し、骨の内部まで確認することで、早い段階で異常を見つけられる可能性があります。

大腿骨頭壊死症では、早く見つけることが、その後の治療の選択肢を広げることにつながります。

今回、黒田先生のお話を伺って改めて感じたのは、「診断がついてからどうするか」だけではなく、できるだけ早い段階で病気を見つけること自体が治療の一部になるということです。

お酒は「飲んではいけない」という話ではありません

最後に、今回も撮影場所としてお借りしたワイン蔵TOKYOさんのお話になりました。

大腿骨頭壊死症ではアルコールがリスク因子の一つとして知られているため、ワインのお店でこのテーマを話していると少し不思議に思われるかもしれません。

ただ、今回のお話は「お酒を飲んではいけない」ということではありません。
大切なのは、習慣的に大量のお酒を飲み続けるのではなく、量を考えながら楽しむことです。

せっかくなので撮影後にはワインも少しいただきましたが、とても美味しくいただきました。

今回の前編・後編を通して、大腿骨頭壊死症という病気を少しでも知っていただき、身近な方に股関節や足の付け根の痛みで悩んでいる方がいたときに、「一度きちんと調べてみた方がいいかもしれない」と思い出していただければ幸いです。

※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。

何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

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