【当院治療に使用している細胞の特徴】―院長のブログ
2021年01月29日(金)
当院で治療につかっている細胞は、ひとつ上の階にあるCPC(Cell Processing Center)で
培養を行っています。
「培養」とは、「細胞の数を増やすこと」と思って頂いて良いと思います。
今回は、当院で使用している細胞の特徴を培養技術に関連して伝えしたいと思います。
幹細胞を培養して治療薬を作る方法は様々ですが、概ね以下のプロセスで行われます。
①細胞を抽出する
②細胞を増やす
③増やした細胞を細胞浮遊液にする
先ず、細胞の抽出段階での特徴をお伝えしたいと思います。
現在の科学技術では細胞を完全に合成することはできませんので、培養を行うためには、患者様から
細胞をいただく必要があります。
細胞は組織の中に埋まっているため、一度、組織から取り出さなくてはいけません。
細胞を取り出す際に、一般的には、組織を溶かす薬品を使います。
しかし、この薬品は細胞も溶かすことができるため、細胞にダメージを与えてしまいます。
当院で採用している方法では、組織を溶かす薬品を使わずに細胞を取り出しています。
細胞を取り出すのに時間が少しかかりますが、細胞のダメージを少なくすることができ、
状態の良い細胞を取り出すことができるため、この方法を採用しています。
細胞を増やす時には、培養液という液体に細胞を浸します。
培養液には血清を添加して使うのですが、当院で採用している培養方法では、ご本人の血液から作った
血清を添加します。
牛の血液から作った血清を添加して培養する施設もあります。
研究として細胞を培養する場合は、牛の血清を使うことが一般的ですので、
牛血清での培養法を採用していてもおかしな話ではありません。
しかし、牛由来の血清にはアレルギーや狂牛病のリスクなどが考えられることから、
当院ではご本人の血清を使って培養を行っています。
ご本人の血清を使って培養するのは、少し技術的に難しいのです。
研究を重ねることで安定して培養する方法を確立することができたので、現在はこの方法を採用しています。
細胞浮遊液というのは、細胞を液体に浮かせた状態にしたものです。
細胞治療では注射で細胞を注入するためには液体にする必要があるため、最終段階として
細胞浮遊液を作る必要があります。
細胞浮遊液を直前まで凍らせておき、体に注入する直前に解凍している医療機関もあるようです。
当院では、フレッシュな状態の細胞を使っています。
凍結した状態であれば保存しやすくはなりますが、解凍直後の細胞浮遊液には死んだ細胞や元気のない
細胞が含まれてしまいます。
より高い治療効果を目指すため、フレッシュな細胞を使って治療を行っています。
技術は日々進歩していますので、将来的には今採用している培養方法より良い方法が出てくる可能性が
あると思っています。
常に最良の方法を考えて、その時点でのベストな培養方法を選ぶよう、これからも情報収集と研究とを
続けて行きたいと思います。
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