【細胞性免疫とCOVID-19】―院長のブログ
2021年07月15日(木)
まだまだ、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。
どのような形で収束していくのか、予想できない状況が続いているように感じます。
そんな中、気になる論文を見かけたので共有したいと思います。
Sekine, T., Perez-Potti, A., Rivera-Ballesteros, O., Strålin, K., Gorin, J. B., Olsson, A., … & Wullimann, D. J. (2020). Robust T cell immunity in convalescent individuals with asymptomatic or mild COVID-19. Cell.
COVID-19に対する長期的な免疫防御にはメモリT細胞の働きが重要であるという内容の論文でした。
メモリT細胞はキラーT細胞(細胞障害性T細胞)の一種です。
ウイルスなどの抗原を覚えておき、キラーT細胞が素早く対応できるように
指示をする仕事をしていると言われています。
キラーT細胞はウイルスに感染した細胞を直接攻撃することでウイルスを取り除く(細胞性免疫)ため、
抗体で行う免疫(液性免疫)とは異なります。
そのため、抗体検査をしてもメモリT細胞やキラーT細胞の働きを評価することができません。
この論文では、無症状もしくは軽度なCOVID-19罹患歴があり、抗体検査が陰性の患者でも
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に特異的なメモリT細胞が検出されたと書かれていました。
つまり、体内に新型コロナウイルスの抗体がなくても、細胞性免疫を使って対応できる状態は
作られている可能性があると書かれているのです。
そうであるならば、抗体検査で陽性の人が少なくても、細胞性免疫による集団免疫を
獲得することは可能なのかもしれません。
この論文を読んで、COVID-19対策に関して少し希望がでてきたように感じました。
今回は、当院で行っている治療とは直接関係のない内容ですが、細胞や体内のメカニズムの
優秀さを知ることができる一編だと思いましたので共有させていただきました。
一日も早く日常が取り戻せることを願っております。
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