第4回YouTubeライブ 整形外科でよく見る病気と治療の選択肢について
2026年10月16日(金)
こんにちは、お茶の水セルクリニック院長の寺尾です。
先日、第4回となるYouTubeライブを行いました。
今回は少し趣向を変えて、整形外科の基本に立ち返り、さまざまな病気について杉谷先生と一緒にお話ししました。
日本整形外科学会では、整形外科で診察する機会の多い病気について、患者さん向けにわかりやすくまとめたパンフレットを公開しています。
今回はその中から、お茶の水セルクリニックでもご相談いただく可能性のある疾患を取り上げ、疾患名を書いた紙を抽選箱から引いて、その場で解説していくという形で進めました。
病名を知ることは、自分の身体に何か起きたときに「もしかしたら一度診てもらった方がいいかもしれない」と気づくきっかけになります。今回はライブの内容から、特に知っていただきたいポイントを整理してご紹介します。
大腿骨頭壊死症は、早い段階でMRIを撮ることが大切
最初は、大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえし)の話でした。
大腿骨頭壊死症は、股関節を構成する大腿骨頭への血流が障害され、骨が弱くなっていく病気です。
壊死の範囲や場所によって、その後の経過や選択される治療が変わります。
一般的にはMRIで壊死している範囲を確認し、状態に応じて治療方針を考えます。
広い範囲に壊死がある場合には、骨切り術や人工股関節置換術などの手術が検討されることがありますし、最近では壊死している骨の中へ細胞を届けるという考え方も出てきています。
大腿骨頭壊死症で特に知っていただきたいのは、強い痛みが出る前から病気が進んでいることがあるという点です。
初期にはそれほど痛みを感じないこともありますが、大腿骨頭が弱くなり、体重をかけたときに負担が加わるようになると違和感や痛みが出てくることがあります。
その後、骨頭が潰れる「圧潰(あっかい)」が進むと、痛みがかなり強くなる場合があります。
そのため、「まだ歩けるから大丈夫」と考えるのではなく、足の付け根の違和感や体重をかけたときの痛みが続いている場合には、一度状態を確認することが大切です。

特にMRIは、大腿骨頭壊死症の早期の変化を確認するうえで重要な検査です。
ステロイド治療を受けた経験がある方や、習慣的な飲酒がある方などでは、大腿骨頭壊死症も一つの可能性として考える必要があります。
肩腱板断裂は「切れている=すぐ手術」とは限りません
続いて取り上げたのが、肩腱板断裂(けんばんだんれつ)です。
腱板とは、肩を動かしたり安定させたりするために重要な腱の集まりです。
その中でも、棘上筋腱は断裂が起こりやすい部位の一つです。
腱板断裂には、転倒などをきっかけに起こる外傷性のものだけでなく、加齢や長年の使用によって腱が少しずつ傷み、すり減るように切れていく「変性断裂」もあります。
ここで少し意外なのは、MRIで腱が切れていることが確認されても、必ずしも強い痛みがあるわけではないということです。完全に断裂しているように見えても、肩を比較的よく動かせる方もいます。
だからこそ、画像だけを見て治療を決めるのではなく、現在どのくらい痛いのか、肩がどこまで動くのか、仕事や生活でどの程度困っているのかまで確認する必要があります。
外傷性で明らかに腱が切れ、機能障害が大きい場合などには手術を検討することがあります。
一方、変性断裂で活動性がそれほど高くない方の場合には、まずリハビリなどの保存療法から始めることもあります。
当院では、保存療法の選択肢の一つとして細胞治療を組み合わせることがあります。
ただし、細胞治療を行えば必ず腱が元通りにつながるということではありません。
腱の形そのものだけではなく、痛みや機能がどう変化するかを見ながら治療を考えていくことが重要です。
どこまで治したいのかで治療は変わります
肩腱板断裂の話の中で、杉谷先生とも「どこをゴールにするのかが大切」という話になりました。
日常生活で困らない程度まで痛みを減らしたい方と、スポーツに復帰して以前と同じように肩を使いたい方では、求める状態が違います。
そうなると当然、治療の考え方も変わってきます。
これは肩だけではありません。
画像上の異常をなくすことだけが、整形外科治療の目的ではありません。
痛みを減らしたいのか、可動域を取り戻したいのか、スポーツへ復帰したいのか、手術をできるだけ避けたいのか。
その方がその後どのような生活を送りたいのかまで考えて治療を選ぶことが大切です。

肩についても、まずMRIなどで現在の状態を確認したうえで、自分がどこまで改善したいのかを医師と相談しながら治療方針を決めていくとよいと思います。
変形性肘関節症は、昔の怪我が関係することもあります
続いて出たのが、少し珍しい変形性肘関節症でした。
膝や股関節の変形性関節症と比べると耳にする機会は少ないと思いますが、肘を長年使ってきた方や、過去に肘周辺の骨折などを経験した方で、年月が経ってから変形や痛みが問題になることがあります。
テニス肘やゴルフ肘と呼ばれる外側上顆炎・内側上顆炎とは、また異なる病態です。
肘の場合、曲がる角度や伸びる角度が少し変わるだけでも、日常生活への影響がかなり大きくなります。
顔を洗ったり拭いたりする、ご飯を食べるために箸を口元まで運ぶといった何気ない動作でも、肘が十分に曲がらないと不自由を感じることがあります。

そのため、単純にレントゲン上の変形を見るだけではなく、「その方が生活の中で何に困っているのか」を確認しながら治療を考えることが大切です。
人工肘関節という治療もありますが、術後には重いものを持つことへの制限が必要になることもあるため、患者さんの生活によってはメリットと制限の両方を考えなければなりません。
痛みを抑えることを目的に注射治療を考える場合もありますし、可動域を保つためにはリハビリも重要です。
まずは肘を専門とする整形外科医に状態を診てもらい、今の生活に合った治療法を考えることがよいと思います。
子どもの肘の骨折では「成長」も考える
ライブ中には、子どもの肘の骨折についても話が広がりました。
子どもの骨には、骨が成長するための「骨端線(こったんせん)」という部分があります。
骨折した場所によっては、この骨端線への影響も考える必要があります。

一方で、成長期の子どもの骨には、多少の変形があっても成長とともに元の形に近づいていく「リモデリング」という力があります。
そのため、骨折後にきちんと肘を伸ばせるか、曲げられるか、手のひらを上に向けられるかといった動きを確認し、必要に応じてレントゲンで骨の形や成長を確認していきます。
過去に子どもの頃の骨折があり、「今になって少し変形が気になる」という場合にも、一度整形外科で確認しておくと安心だと思います。
TOPs®細胞とは何が違うのか
ライブの後半では、「一般的な幹細胞治療とTOPs®細胞治療は何が違うのですか?」という質問もいただきました。
TOPs®細胞も、ES細胞やiPS細胞のようなまったく別の種類の特殊な細胞というわけではありません。
身体の中に存在する体性幹細胞を利用するという点では、一般的な幹細胞治療と同じ考え方です。
違いとしてお話ししたのは、細胞を採取し、増やし、治療に使用できる状態へ整えるまでの扱い方です。
細胞は、採取や培養の過程でさまざまなストレスを受けます。TOPs®細胞では、できるだけ細胞へのダメージを抑えながら培養し、本来持っている能力を発揮しやすい状態で患者さんの身体へ戻すことをコンセプトとしています。
新しい能力を人工的に付け加えるという意味ではなく、「もともと持っている細胞の状態をできるだけ良く保ったまま治療に使う」というイメージで考えていただくとわかりやすいと思います。
培養方法には、それぞれの施設や治療ごとに考え方があります。
当院では、細胞をできるだけ大切に扱い、ダメージを少なくすることを重視しています。
再生医療をもっと受けやすい治療にしたい
細胞治療については、効果や安全性だけでなく、費用も大きな課題です。
再生医療は現在でも決して安い治療ではなく、治療を検討したくても費用が理由で難しいという方もいらっしゃいます。
細胞を培養する際には、培地だけでなく、フラスコやピペットをはじめとした多くの消耗品を使用します。
その中には輸入品もあるため、為替などによって製造コストが影響を受けることもあるという話になりました。

安全性や品質を保つことは当然ですが、そのうえで少しでも患者さんが治療を検討しやすい価格にしていくことも、再生医療を広げていくうえでは重要な課題だと感じています。
病気を知ることも、医療の一部だと思います
今回のライブでは、時間の関係ですべての疾患を取り上げることはできませんでした。
ただ、今回改めて感じたのは、病気について知っていること自体がとても大切だということです。
足の付け根が痛いときに大腿骨頭壊死症という病気を知っていれば、「一度MRIを撮ってみよう」と考えるきっかけになります。
肩が痛いときにも、「単なる肩こりではなく腱板に問題があるかもしれない」と考えることができます。
病気を知っているからこそ、早めに医療機関へ相談できることがあります。
今回のライブでも少し余談としてお話ししましたが、私は、もっと早い段階から医療について学ぶ機会があってもよいのではないかと思っています。
身体の基本的な仕組みや、病院へ行くべき症状、薬や保険制度について少しでも知識があれば、自分自身の身体について判断しやすくなりますし、必要なときに適切な医療へつながりやすくなると思います。
今回のYouTubeライブをきっかけに、整形外科にはどのような病気があり、どのような治療の選択肢があるのかを少しでも知っていただければ幸いです。
今後も、今回取り上げることができなかった変形性膝関節症や半月板損傷などについて、機会を作って詳しくお話ししていきたいと思っています。
次回のYouTubeライブでは、リハビリの専門家にも参加していただき、再生医療とリハビリの関係や、実際のリハビリでは何をしているのかについてお伝えする予定です。
※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。
何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。
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