再生医療で健康寿命を延ばしましょうセミナーPart2 〜齋藤医師による変形性膝関節症の治療結果〜
2023年01月11日(水)
こんにちは、お茶の水セルクリニックの寺尾です。
今回は前回の続きで、齋藤医師のパートです。
前回のブログはこちらからご覧下さい
↓
再生医療で健康寿命を延ばしましょうセミナーPart1 〜齋藤医師による変形性膝関節症の概要〜
現在の変形性関節症の治療法
変形している関節症の主な治療法として、以下の様なものがあります。
保存的治療法
・運動指導→関節に負担のかからない動かし方を指導
・体重制御→BMIなどを基準にしてダイエットする様に指導
・理学療法→関節周りの筋肉に低周波治療や温熱療法などを行う
・筋力訓練→弱っている筋力をアップさせるトレーニング
・薬物療法→痛み止めの飲み薬やヒアルロン酸、ステロイドの注射など
・装具→関節周りに装着するサポーターなどを処方
保存的治療法のメリットは、外科的治療法に比べて体にダメージが少ないというところです。
また運動や体重制限など、体のダメージが少ないものから行なっていきます。
この保存的治療法でも効果が見られない方は、外科的治療法に移ります。
外科的治療法
・骨切り術→O脚など変形している部分の骨を削って形を整える手術
・人工関節置換術→軟骨を金属に取り替える手術
あくまでも人工関節は最後の手段です。
リスクは少ないのですが、感染症のリスク、血栓塞栓症のリスク、関節の動きが悪くなるなどのリスクがあります。
そのため100%快適になるという保証ができません。
手術はしたくないが、手術以外の治療法では良くならないという方が多くいらっしゃいました。
そこで齋藤医師は、痛みや変形の抑制をする技術について大学で研究を続けてきました。
新たな治療法の発見
1960年代に骨髄から、2000年代には脂肪組織から間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)と呼ばれる細胞が発見されました。
骨や軟骨や脂肪など、何にでもなれる細胞です。
これは齋藤医師が自らお腹から採取した脂肪由来の幹細胞です。
採取した直後はまばらなのですが、数日するとあっという間にバッと増えていきます。
本来は怪我をした時に傷を治す役目をしてくれる細胞です。
なのでこの細胞を培養して、痛んだ関節に入れると効果が出るということで数年前から注目されています。
齋藤医師が研究していた頃は、間葉系幹細胞を軟骨や骨組織に育てて、痛んでいる関節に入れていました。
しかし、軟骨や骨組織に培養しなくても、幹細胞を直接関節内に入れると痛みが取れるという論文が14年前に発表されました。
変形性関節症は、非常に複雑な原理で起きる事がわかっています。
関節を包んでいる滑膜(かつまく)にいる免疫細胞が、軟骨を破壊しているからであるとされています。
その間違った働きをしている免疫細胞が、注入された幹細胞によって正常に戻る事がわかっています。
実際の幹細胞治療の流れ
まずは、お腹から脂肪を採取していきます。
おヘソの脇に局所麻酔をして、数ミリ切っていき、米粒大の脂肪を採取します。
だいたい5〜10分ほどで終わります。
そこから4〜5週間ほど培養を行ない、幹細胞の数を1億個までに増やします。
その幹細胞を関節内に注射で戻していきます。
8年前に再生医療等安全性確保法という法律ができまして、自分の体から採取して細胞を関節に戻すのは、第2種という規制を受けています。
再生医療はこの法律に則り、安全に行なっております。
また、この表に中リスクとかかれていますが、幹細胞が癌化したという報告は今までに一件もありませんので、非常に安全に行える治療法です。
脂肪幹細胞の効果
痛みの改善期間
このグラフは幹細胞を1千個入れた方、5千個入れた方、1億個入れた方の痛みの変化について2年間追っています。
一回の注射で1年間かけて痛みが減っています。
私たちのクリニックの実感としては、3ヶ月ぐらいから変化が見られる事が多いです。
2年間経っても痛みが戻らない方もいますが、中には痛みが戻ってしまう方もいました。
変形性膝関節症の進行具合
軟骨に穴が空いていた方に、幹細胞治療を行いMRIで軟骨の状態をチェックしていきます。
軟骨が増えていくという結果もあるのですが、全体的にみていくと微増です。
軟骨が増えていくというよりは、軟骨の減少を止められるという効果が期待できそうです。
お茶の水セルクリニックでの成績
現在約500名の患者様の治療が進んでおり、その痛みの経過について、データを一部お出しします。
左から変形が軽症な方(Mild)、中等症(Moderate)、重症(Severe)となっています。
この表を見ると、全ての患者様は痛みの減少がみられますが、重症化するにしたがって改善率が悪くなっています。
具体的な症例
77歳女性
痛みの指標は10→6と改善は見られましたが、膝の使い勝手(KOOS)の改善はあまり見られませんでした。
この方は腰が悪く、リハビリテーションがうまく進まなかったという事が原因にあります。
53歳男性
子供の頃に柔道をやっていて半月板を痛めたという方です。
77歳の女性の方と同じ様な軟骨の削れ具合なのですが、痛みはあるけどゴルフやジョギングや筋トレを欠かさないアクティブな方です。
筋肉がある方は、痛みが出にくい傾向にあります。
幹細胞治療をした後は、ほとんど痛みがなくなり、膝の使い勝手も若い時と同じぐらいまで回復しました。
2年目も評価したところ、いい状態がキープできていました。
76歳女性
この方は156cm70kgでBMIが28.8あるので少し肥満気味です。
運動も好きではなく、骨の中に炎症もあり治療の効果が出るかなという重度の方でした。
幹細胞治療を始めてからはよかったのですが、新型コロナが流行り出してリハビリテーションもできなくなりました。
その後に治療を中断してしまい、人工関節の手術を受けられました。
77歳男性
社交ダンスをしていて、膝を痛めてしまった方です。
幹細胞治療を行なってから、1年経過して結果が出てきました。
今では1時間くらいは踊っていても平気だそうです。
53歳女性
この方は若い時に膝関節を痛めてしまい、MRIで分かる通り50代にしてはかなり変形が進んでいます。
普通であれば人工関節の適応となってしまうぐらいですが、趣味のテニスはできていました。
そこで幹細胞治療を行なったところ、1年ほどで左右の膝関節の痛みがなくなりテニスもしっかりできる様になりました。
幹細胞治療のまとめ
・変形が進んでしまうと効果は減弱する傾向にある
・普段から運動をしている人は効果が出やすい
・膝関節の不安定性がなければ効果が出やすい
・MRIの結果で膝関節の今後がわかりやすい
また膝関節だけではなく、股関節や肩関節など他の関節にも効果があります。
齋藤医師は、日比谷の本郷キャンパスの東京大学の整形外科ラボで研究をしています。
研究結果をお茶の水セルクリニックに持ち帰り、日々の研究に活かしています。
また、医師を始め、ナース、クラーク、培養士達と連携をして、チームで患者様の回復に努めてまいります。
今までの保存的な治療を受けても効果がないという方は、まずはお気軽にご相談ください。
※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。
何かご不明な点等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
少しでも興味がある方は、当院の公式サイトをご覧頂き、お気軽にお問い合わせ下さい。
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