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【変形性膝関節症について】—スタッフブログ

2020年10月15日(木)

こんにちは!看護師の湯本です。

 

変形膝関節症で趣味や日常生活に不自由さを感じている人が沢山いらっしゃいます。

手術を勧められた方、ヒアルロン酸を定期的に注入してしのいでいる方、まずは痛み止めの服用だけで

疼痛コントロールを図っている方、最近痛みを感じるようになってきて受診を考えている方、

色々な状況の方がいらっしゃると思います。

今回は、どの段階の方にでも役立つ情報をお伝えします。

 

 

 

膝の変形性関節症の原因は?

変形性膝関節症の原因は、2つに分類されています。

明らかな原因がないものが一次性、病気やケガなど原因が明らかなものを二次性として分けられています。

一次性が大部分を占めています。

一次性

加齢による退行性変化(軟骨のすり減りなど)

肥満、職業、遺伝、生活環境、O脚・X脚などの下肢アライメント異常などが関係

二次性

・炎症性疾患(関節リウマチなど)

・外傷(靭帯損傷、半月板損傷、骨折など)

・壊死性疾患(大腿骨顆部壊死など)

・その他(神経病性関節症、骨系統疾患、代謝・内分泌疾患、血友病性関節症、腫瘍性疾患 など)

 

 

膝の変形性関節症と年齢・性別の関係

変形性膝関節症の原因は関節軟骨の老化によることが多く、加齢は変形性関節症の最大の危険因子と

なっており、40歳以上の5人に1人が罹るといわれています。

男女比は1:4で女性に多くみられ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。

その理由は明確になっていませんが、男性に比べて筋力が弱いことや女性ホルモンの影響も指摘されています。

 

 

 

 

変形性関節症で関節が痛い人の数

厚生労働省では、国内の変形性膝関節症患者数を、自覚症状がある患者数で約1000万人、

潜在的(レントゲン画像上の変化のみ)な患者数で約3000万人と推定しています。

膝の痛みのある方々の約半数が40代~50代で痛みを感じ始めているという統計もあります。

 

 

膝の変形性関節症の症状って?

初期では立ち上がり、歩き始めなど動作の開始時にのみ痛み、しばらく身体を動かしたり休んでいれば

痛みが取れます。

中期では暫く休んでいれば治まっていた痛みがなかなか消えなくなります。痛みによって正座や階段の

昇り降りが困難となります。また、膝の関節内に水が溜まり、腫れや熱を持つといった症状が現れます。

末期になると関節の軟骨がなくなって骨が直接こすれるため、膝がピンと伸びず、立つことや歩行が

困難になります。安静時にも痛みが取れず、膝の変形も進行します。日常生活にも支障をきたし、

行動範囲が狭まるため、精神的な負担を感じやすくなります。

 

 

変形性関節症は膝以外に股関節や足首にも起こるの?

関節の変形は膝だけではなく、あらゆる関節に起こります。

ここでは股関節と足関節の関節症について簡単に説明します。

変形性股関節症

変形性股関節症とは、股関節の軟骨がすり減って、骨盤の臼蓋(股関節の受け皿のような部分)と

大腿骨の骨頭が変形することで痛みや動かし辛さなどが生じる状態です。

変形性股関節症の有病率は1.0~4.3%で、これを日本の人口で換算すると120万~510万人になります。

また、股関節の場合も女性の方が罹りやすい傾向にあります。

原因としては股関節の形成不全といった子供の頃の病気や発育障害の後遺症が主なもので、

股関節症全体の80%と言われています。

変形性足関節症

変形性足関節症とは、足首の関節の軟骨がすり減って関節に痛みを生じる状態です。

原因としては加齢、過去のケガ、疾患によるもの(関節リウマチなど)があります。

インソールを使って軟骨への負担を軽くしたり、医療用の硬いサポーターで足関節を固定して対処し、

それを一定期間行っても改善が見られない場合は手術という選択肢が出てきます。

 

 

膝の変形性関節症の治療にはどんなものがあるの?

変形性膝関節症の治療は大きく分けると2種類あります。

手術をせずに運動や薬などで症状を緩和させる保存療法と、手術療法です。

当院で行っている再生医療は、その2つの間に位置付けられる比較的新しい治療法です。

保存療法では痛みのコントロールが効かなくなってきたが手術はまだ行わない方などに向いている治療です。

1、保存療法

・痛み止めの内服や外用薬の使用

・関節内にヒアルロン酸を注入

・リハビリテーション(大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練)

・足底板や膝装具の作成

2、上記の対応でも痛みが治らない場合

・内視鏡(関節鏡)手術

・高位脛骨骨切り術

・人工膝関節置換術

3、1と2の間に位置付けられる治療(再生医療)

PRP注入療法 

PRPとは、Platelet-Rich Plasmaを略した名称です。

日本語では多血小板血漿と呼ばれていて、血液を遠心分離にかけ血小板を多く含む層を抽出したものです。

血小板を濃縮した血漿を患部に注入することで、炎症を抑える効果や組織の修復を促すことを

目的とした治療法です。

PRPに含まれる成分が患部へ幹細胞を引き寄せることで、修復を促すことが期待できます。

患者様ご自身の血液を使用するため安全性も高く、当日の治療(日帰り)が可能です。

当クリニックでは、筋肉・腱・靭帯などの軟部組織損傷や、変形性関節症及び

関節痛(膝・股関節・足首・肩・肘・手首)に対し、PRP 療法、もしくはAPS療法(次世代型PRP療法)を

用いた局所注射療法も行っています。

幹細胞注入療法 

膝関節・股関節・足首・手首・肩・肘などの変形性関節症、関節痛に対し、自己脂肪由来幹細胞を用いて

局所注射療法を行います。

当クリニックでは軟骨がすり減って働きが低下した結果、様々な症状を引き起こしている関節に、

ご自身の脂肪から取り出した幹細胞を培養して注入し、治療を行います。

 

 

膝の変形性関節症にサポーターは有効?

膝のサポーターは変形性膝関節症を治すものではありませんが、膝の痛みを軽減したり膝関節を安定させて

関節症の進行を遅らせてくれる働きがあります。

痛みの軽減

痛みの軽減が膝サポーターの大きな役割となっています。サポーターを装着することで

可動範囲が制限されるため、膝への負担が少なくなります。

立ち上がる時や歩行の時、階段の昇り降りなどの時に膝の痛みを感じにくくすることができます。

膝の固定

膝を固定することで関節や筋肉の動きを助けたり、無理な動きを防ぐことができます。

バスケットボールやバレーボールなど、激しくジャンプするスポーツをする時に使うと、

ケガの予防にもなります。

この場合はスポーツ用サポーターがおすすめです。

膝の保温

膝サポーターは保温目的にも利用されます。

膝を温めることによって血行が良くなり、痛みが緩和される場合があります。

冷えが原因の膝痛の緩和に役立ちます。

締め付けが弱く、筒状の毛糸や温熱効果のある素材でできた保温用のサポーターがおすすめです。

 

 

膝の変形性関節症に有効な運動は?

膝関節を動かすことによって膝の周りの筋肉を鍛え、膝の負担を軽減することができます。

また、荷重をかけなくても高めの椅子などに座って関節をブラブラ動かすだけでも軟骨の再生に繋がります。

以下の動画は当院が推奨している膝の運動です。ぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=alPy7goSQvk

 

 

膝の変形性関節症にはどんな手術が行われるの?

別の項でも出てきましたが、変形性膝関節症の治療はいくつかあり、保存療法ではコントロールできなくなると

手術という選択肢が出てきます。手術は大きく分けると3種類あります。それぞれについて解説します。

内視鏡(関節鏡)手術

膝の変形が進行していない、初期の方に対して行われる手術です。

擦り切れてしまった半月板や軟骨のささくれのような部分を取り除いたり、増殖した滑膜を取り除きます。

関節鏡という内視鏡のようなものを使用して、1㎝程度の傷2~3か所で手術を行うことができます。

術後は早ければ翌日に退院できます。

この手術は膝の変形を治したり、軟骨や半月板を再生させるものではありませんので、

一時的に痛みを取ることを目的としている手術です。

高位脛骨骨切り術

膝の変形によって、膝の軟骨や半月板が痛んできます。膝の変形を骨を切って矯正するのが骨切り術です。

ひざ下の内側を切開し、すねの骨(脛骨)を斜めに切って変形の程度に合わせて角度を調整し、

人工骨を挟んだ状態で金属のプレートを使って固定します。

骨切り術の場合は、固定に使用した金属のプレートを1年程度で取り出さなければなりません。

また、骨を切った部分が癒合するまでに時間がかかるというデメリットがあります。

しかし、自分の関節の骨を温存できるため、動作や運動に制限がないことがメリットとして

挙げられます。この手術は比較的若い、仕事やスポーツを積極的に行いたい初期から中期の患者様に

行う治療方法です。

人工膝関節置換術

人工膝関節置換術は末期の患者様に適応となる手術で、大きく2種類に分けられます。

膝関節全体を置換する全置換術と、痛んだ部分が内側に限局している場合の部分(単顆)置換術です。

【人工膝関節の選択肢】ーDr山神のブログ

この手術は他の手術と比較して、痛みを取るのにより確実性が高いことが最大の利点です。

リハビリは手術後早期から始まり、2~3週間の入院で退院が可能となります。

手術後の経過についてはこちらのブログをご覧ください↓

【人工膝関節 手術後の流れ】-スタッフブログー

 

 

膝や足、股関節の変形性関節症には幹細胞が効くの?

保存療法と手術療法の間に位置付けられているのが幹細胞療法です。

ヒアルロン酸注射や痛み止めの薬を飲んでも痛みが取れない方、手術以外の治療法を検討したい方に

選ばれている治療法です。

幹細胞とは、骨・軟骨・腱・神経・皮膚など私達の体をつくる様々な細胞に変化する能力【多分化能】と、

自分と同じ能力を持った細胞に分裂することができる能力【自己複製能】を持つ細胞のことです。

この「幹細胞」は、体内の損傷がある部位を探し当ててくっつき、炎症を抑えると共に

傷を修復する働きがあると言われています。

 

ご自身の体から取り出した幹細胞を培養し、増やしてから体に戻す治療が幹細胞治療です。

当院で幹細胞治療を行う場合の流れを説明したブログがありますので、ぜひご覧ください。

【幹細胞を用いた治療の流れ】―スタッフブログ

 

 

おわりに

今回は膝の関節症でお悩みの方々に役立つ情報をお伝えしました。

変形性膝関節症で日常生活もままならず、大変な思いをしている方は沢山いらっしゃると思います。

そのような状態を改善・予防するために当院がお役に立てればと思います。

 

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