【前十字靱帯損傷について】Dr村上ブログ
2024年04月22日(月)
月曜日担当の村上医師が、前十字靭帯損傷について解説させていただきます。
【前十字靱帯の機能】
膝関節には大きく分けると、膝関節の中にある前十字靱帯と後十字靱帯、膝関節の外にあり内側側副靱帯と外側側副靱帯の4本の靱帯が存在します。その中でも前十字靱帯はもっとも重要な役割を果たしている靱帯になります。前十字靱帯は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)をつないでおり、大腿骨に対して、脛骨が前方に移動することと回旋することの制御を担っています。
【受傷起転】
ジャンプの着地やカッティング動作で、膝が内側に入る(膝をひねる)ことで受傷します。
スポーツ種目ではサッカー、バスケットボール、アメリカンフットボール、スキーなどで発生頻度が高くなります。
【症状】
前十字靱帯を損傷すると、高確率で膝関節の中に血が溜まります。そのため膝関節の腫れを自覚することが多いです。また、膝関節の腫れや同時に受傷した半月板の損傷などにより膝関節の痛みを自覚します。痛みは時間が経過するとともに改善する傾向があります。
前十字靱帯が機能しないことにより、走ったときや階段を下るときに膝がガクッと崩れることがあります。不安定性が強い場合、平地歩行でも膝が崩れることがあります。
【診断】
整形外科医の診察が必要になり、徒手検査とMRI検査を組み合わせて、診断します。
- 徒手検査
脛骨を前方に動かしたときや膝関節をひねったときに前十字靱帯によるストップがかかっているかを確認します。
- MRI検査
単純X線検査やCT検査では靱帯が描出されないため、描出可能なMRI検査を行います。画像で前十字靱帯の状態を評価するだけでなく、前十字靱帯損傷と同時に損傷しやすい半月板や軟骨の状態を確認します。
【治療】
保存療法と手術療法があり、膝関節の状態、年齢、活動レベル、全身状態などいろいろな要因を考慮して選択しますが、一般的には手術療法が推奨されます。
- 保存療法
リハビリなどで大腿四頭筋筋力を強化し、装具を着用し膝関節の不安定性を減らします。前十字靱帯損傷によって生じる膝関節の不安定性を完全には解消できないため、半月板損傷や軟骨損傷につながる可能性があり、結果として変形性膝関節症になるリスクがあります。
- 手術療法
過去には損傷した靱帯を縫い直す方法が行われていましたが、成績が悪いため、現在は前十字靱帯を作り直す手術を行います。ご自身の身体の組織を前十字靱帯の代わりとして使用し、大腿骨と脛骨に繋げます。靱帯の代わりとなるものとしては、ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)腱、骨付き膝蓋腱(膝の前面の腱)、大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)腱などが用いられます。
手術の前後はリハビリが必要になり、スポーツ復帰には手術後8~12ヵ月かかることが一般的です。
以前は運動を行わない方には保存療法が選択された時代もありましたが、現在は前十字靱帯が機能しないことによる早期変形性膝関節症のリスクを減らすために手術療法が推奨されています。
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