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【関節には治る力がない・・・?】―院長のブログ

2020年11月27日(金)

今回は、関節の持つ「治る力」について書いてみたいと思います。

 

少し前まで、関節内の損傷は治らないものだと考えられていました。

その理由は、関節には「治る力」がないと考えられていたからです。

 

ケガをすると血が出ます。

その血が、修復を促進することが多いのですが、関節の表面にはほとんど血管がないため、

血液を届ける方法が乏しい状態です。

そのため、関節には治る力がないと考えられていたのです。

 

例外的な事もあります。

膝関節の中にある半月板です。

半月板は縁1/3には血流が豊富にあります。

そのため、縁に近い部分に傷ができても治りやすいと考えられています。

 

例外を除けば、関節には「治る力」がなく、一度ダメージを受けてしまうと治ることはないというのが

整形外科での常識でした。

 

しかし、実際には「治る力」はあることが近年の研究で分かってきました。

滑膜という部分が、関節内の修復を担当しているということが示されるようになってきたのです。

東京医科歯科大学の関矢一郎教授のグループが発表した論文では、半月板を損傷すると関節液内の

幹細胞が増加することが示されており、その細胞が修復を担当しているのではないかと考えられています。

Sekiya, I., Ojima, M., Suzuki, S., Yamaga, M., Horie, M., Koga, H., … & Muneta, T. (2012). Human mesenchymal stem cells in synovial fluid increase in the knee with degenerated cartilage and osteoarthritis. Journal of Orthopaedic Research30(6), 943-949.

 

治るメカニズムを持っていることは確かなのですが、関節の修復力が弱いことも確かです。

このことは、修復を担当する細胞の数が足りないことも理由の一つだと考えています。

そこで、修復を担当する細胞=幹細胞を追加することで治療が促進するであろうという仮説が立ちました。

その仮説に則って研究、開発されてきたのが幹細胞治療です。

 

幹細胞治療は、自分自身の持つ修復力を引き出し、最大限活用する治療法です。

自己修復メカニズムによる治療の為、限界もあります。

しかし、余分なことをしないため安全性が高いという点が大きなメリットになっています。

 

人工関節置換術などの大きな手術を検討している段階でも活用できる治療法ですので、

関節の症状で困っているのであれば、気軽に相談いただけたらと思います。

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