【変形したままでも、関節の痛みはなくなります】―Dr寺尾のブログ
2020年08月12日(水)
こんにちは!
院長の寺尾です。
今回は、関節の変形と痛みの関係についてお話ししたいと思います。
皆さんは「関節が変形してしまった」と聞いた時、どのように感じられるでしょうか。
「もう、一生、変形が治ることはない」
「変形が治らないなら、今後も痛みは引かないだろう」
「生涯、痛みとともに生活しなくてはいけない」
このように感じられる方がいらっしゃるかもしれません。
ですが、これは大きな勘違いです。
実は、大きく変形しているにもかかわらず関節の痛みがなかったり、痛みがあってもとても軽いという方がいらっしゃいます。
私が診察した患者さんにも、そういう方がいらっしゃいました。
その方は、程度のとても強いO脚になっていました。(FTA220°)
歩きにくさに関しての相談を希望されて受診されたのですが、話をうかがうと、膝の痛みは全くないと仰っていました。
このような病態は以前より知られていて、整形外科医の間では有名な話でした。
関節変形の程度を表すKL(Kellgren-Lawrence)分類では、正常な状態をグレード0として、最も変形している状態をグレード4とした5段階で分類しています。
この内、グレード2以上の場合を病気として考えることとしています。
実は、グレード3、4でも30%程度の人が痛みを感じていないという報告があります。
また、グレード0でも20%近くの人が痛みを感じているという報告もあります。
変形の程度が強ければ症状も強くなる傾向にあるものの、変形が強くても痛みがないということは十分に起こりうる現象なのです。
では、なぜ、変形をしていても痛みがないのでしょうか?
一口に関節痛といっても、原因になる関節内の組織は様々です。
滑膜、筋腱靭帯、半月板、軟骨、骨、神経、心理的要素・・・
「変形」という言葉は、あくまでも立体構造上の特徴を表したものに過ぎません。
変形をしていても、各々の組織で痛みに関連した反応が起きなければ痛みを感じないのです。
細胞を使った関節治療では、この状態を目指して治療を行うことがあります。
細胞が作れる組織の量には限界があります。
そのため、骨も含めて大きく関節が変形しているような方では、形を元通りにすることは難しいです。
そういった方の治療を行う場合、変形をなくすことではなく、症状をなくす若しくは軽くすることを目標に治療をしていくことが多くなります。
このような目標設定にすることで、変形の強い関節に対しても、細胞治療を行っていくことが可能なのです。
変形が残っていても、症状がなくなればADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)は大きく改善します。
まだまだ、分かっていないことも多い細胞治療ですが、正しく使うことで様々な効果を出すことができる治療法ですので、上手く活用することが大切です。
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