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脂肪由来幹細胞を使った治療で使う細胞培養に必要な採取脂肪量の変遷

2024年08月08日(木)

こんにちは、お茶の水セルクリニックの寺尾です。
今回は、幹細胞治療に必要な脂肪の採取量の歴史についてお伝えしていきます。
幹細胞治療を行っていくためには、素となる幹細胞を患者さんの身体から集めてこなくてはいけません。

ここ最近でよく行なわれているのは、脂肪組織の中にある脂肪由来幹細胞を使った治療です。
脂肪由来の幹細胞を採るためには、患者さんの身体から脂肪を採らなくてはいけませんが、脂肪を採る量は昔と比べてだいぶ少なくなってきました。
現在当院で採取する脂肪は約0.2gで、米粒数個分ぐらいの脂肪をいただければ問題ありません。
以前の脂肪採取は、約300~400ml(ジュースの缶1本分)の脂肪を採取していました。

昔は“培養をしない手技”がメインだったので脂肪を350~400ccを採取して、その中にいる細胞を抜き出して培養をせずに“そのまま投与する”という治療法がメインで行われていたので、どうしても脂肪を大量に採取する必要がありました。

その治療も脂肪を採取して当日に戻せるというメリットはありましたが、必要とする脂肪量が大量のため術後の皮下出血(内出血)が強く出ることが多かったです。
約350mlの皮下脂肪を採取すると、足まで紫色に皮下出血になってしまうという様なことがありました。
もちろん命に関わるような負担になるわけではないのですが、やはりそれでも患者さんの負担は大きいということで、そこから次のフェーズとして“幹細胞を培養していきましょう”という流れができました。

培養することで最初の細胞の数が少なくても数を増やすことができるので、脂肪を採取する量が少なくて済みます。
その少なくなったという量が、だいたい約20mlで“お猪口1杯分の脂肪”という表現の仕方をしています。

脂肪を採取する量が350mlからお猪口1杯分となると少なくなるのですが、20mlの脂肪を採取するのも患者さんの負担は大きいものでした。

現在ではそこからさらに進歩して、米粒大の脂肪を数個(約0.2g)採取して、そこから幹細胞を抽出して培養することができるようになり、患者さんの負担が大幅に減りました。

どのように0.2gの脂肪を採取するのか?

おヘソの少し横のところを約3mmほど切開していきます。


そこから皮下脂肪の中に向かって、ボールペンの芯ぐらいの太さの専用の装置をスッと入れていきます。


先端がバネの仕掛けで動く様になっていて、その動くところで脂肪の粒を取ってくることができます。
その脂肪の粒を何個か取らせていただくと、培養に必要な量の脂肪が採取できます。

この方法で行う事で、最初の頃に比べて、患者さんの身体の負担が圧倒的に少なくなりました。
ただ量は少ないとはいえ身体に対して数ミリ切開をするので、皮下出血をゼロにすることはできません。

皮下出血に関してはこちらをご覧ください

脂肪採取後の皮下出血について

元々“皮下脂肪”の周りはとても毛細血管が多いところなので、脂肪の組織を採取すると大なり小なり血管を傷つけてしまいます。
どうしても皮下出血というのはゼロにはできないと思っています。

ただ毛細血管があるおかげで、脂肪の中にある幹細胞は、他に比べて外部からの影響を受けにくくて維持されやすく“コンディションが良い”というような論文もあります。
そのため、脂肪の中の幹細胞を使っています。
どうしても皮下出血が気になる方は、お腹に皮下出血ができてしまうと困るというようなタイミングを外して細胞の採取をするのがいいと思います。

当院では、できるだけ患者様の負担にならないように脂肪採取の日程など細く相談して実施していきます。
ささいなことでもかまいませんので、お気軽に当院までご相談ください。

※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。

何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽お問い合わせください。

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