再生医療で健康寿命を延ばしましょうセミナーPart1 〜齋藤医師による変形性膝関節症の概要〜
2022年12月26日(月)
こんにちは、お茶の水セルクリニックの寺尾です。
本日は、先日行いました「再生医療で健康寿命を延ばしましょう」のwebセミナーの内容についてお伝えします。
私、寺尾は体の痛み・不調に対する幹細胞の点滴療法について、齋藤医師は変形性膝関節症に対する幹細胞注射療法についてお話ししました。
齋藤医師は、東京大学の整形外科で変形性膝関節症を研究している傍らで、週一回お茶の水セルクリニックで細胞治療をしています。
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今回は、その齋藤医師のパートからお伝えします。
膝関節の痛みの原因とは
誰しも一度は、若い時に関節の痛みを経験していると思います。
20代・30代は関節に痛みを感じても、日が経てば痛みがなくなり忘れてしまうというのが通常です。
しかし、40代以降は関節の痛みが長引きやすいと言われています。
特に、関節の痛みの訴えが多いのがやはり膝関節です。
関節は骨と骨が凹凸の形でジョイントする様な構造になっています。
そのまま直に骨と骨がくっついてしまうと、擦れ合ってしまい骨がダメージを受けてしまいます。
そこで、ぶつかってしまう骨の表面には軟骨がコーティングされていて、軟骨同士が擦れ合う様になっています。
この軟骨の摩擦係数は0.0001〜0.03と言われていて、アイススケートで滑るより遥かに摩擦がないといわれています。
軟骨によって摩擦がなくなることで、関節を動かしても骨が守られる仕組みになっています。
また、太もも上部の骨の先は丸くカーブしています。
そのカーブに合わせる様に半月板(はんげつばん)があります。
この半月板も軟骨の一種で、柔らかい耳たぶの様な組織です。
膝関節は不安定な関節でもあります。
そのため関節の横を支える側副靱帯(そくふくじんたい)、前後にずれない様にする十字靱帯(じゅうじじんたい)などの靱帯で固定されています。
よくスポーツなどで怪我をするのは、内側側副靱帯と前十字靭帯です。
さらに膝関節を包む様に関節包(かんせつほう)と呼ばれる膜に覆われています。
その中には滑膜(かつまく)という組織があります。
この組織により中が閉鎖空間になり、滑膜から潤滑油である関節液が出て関節内を満たします。
「水が溜まる」という事をよく聞くと思います、それは関節内に炎症があって、炎症を抑えるために滑膜から潤滑油が多く出ている状態です。
その潤滑油自体は悪くないのですが、大量に出る事により関節内部を圧迫して痛みが出てしまいます。
その潤滑油を抜く(水を抜く)事で圧迫が解消されて痛みがなくなります。
ただ、炎症の原因は改善されていないので、根本的な治療にはならない事が多いです。
現在の変形性関節症の考え方
正常な状態は、関節の骨と骨の隙間が空いていてスペースができている状態です。
しかし、軟骨がなくなってしまい変形が進むとスペースがなくなってしまいます。
昔は、軟骨が擦り減る事が変形性膝関節症のほぼ全てだと言われてきましたが、近年ではその考え方が変わってきました。
軟骨の擦り減りだけではなく、軟骨が付着している骨の変形や骨の出っ張り、半月板の断裂、関節内に水が溜まるなどの要素も加味することが大事だとわかってきました。
変形性膝関節症は軟骨の擦り減りに注目されがちですが、関節全体の年齢的な変化による疾患です。
変形性膝関節症の痛みはどこからくるのか?
「この膝の痛みはどこからくるのか?」と思われる方も多いです。
軟骨が擦り減っているのだから軟骨から痛みが出ていると想像されますが、実際は軟骨には痛みを感じる神経がありません。
先ほどお伝えした、滑膜から痛みの信号が送られています。
さらに半月板の外側は痛みを感じますので、半月板を痛めた際にも膝の痛みを感じます。
また、骨に付いている筋肉や腱の部分も痛みを感じやすかったり、軟骨が付いているすぐ下の骨も変形すると痛みを感じます。
この中で特に痛みを感じる組織が、滑膜と軟骨の下の骨と言われています。
この様に一概に膝の痛みと言っても、様々な要因が重なっている場合があるので、画像で原因がわかる場合もありますし、わからない場合もあります。
変形していれば必ずしも痛みが出るという訳ではありません。
画像の所見でわかる場合のパターンを紹介します。
この画像は、私が担当している膝を痛めている患者様なのですが、左の画像で骨の中に白く写っている場所があります。
この白い部分は炎症がある部分で、この様な画像所見が見られる場合は炎症部位が原因の事が多いです。
変形しているというのは、一般的には右肩下りで悪くなっていくと思われますが、実際にはすごく良くなったり、急に悪くなったり複雑に進行していきます。
例えば転倒して膝を痛めて、膝の状態を悪くしてしまった方がいた場合です。
しかしその後は、転倒したのを忘れるぐらい落ち着いた期間があります。
痛みが落ち着いたと思えば、忘れた頃に再び痛みが出てくる場合もあります。
この様に変形は一定ではなく、ランダムに進行していく事がほとんどです。
変形性膝関節症と言われて、20年以上手術をしない方もいれば、状態が悪化して数年で手術になってしまう方もいらっしゃいます。
複雑な経過を経て、変形性膝関節症の状態になっていきます。
次回のパートでは、変形性膝関節症の一般的な治療法と幹細胞を使った治療法についてお伝えします。
※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。
何かご不明な点等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
少しでも興味がある方は、当院の公式サイトをご覧頂き、お気軽にお問い合わせ下さい。
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