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大腿骨頭壊死症とは?専門医に聞く原因と治療、関節を残すための選択肢

2026年09月04日(金)

こんにちは。お茶の水セルクリニック院長の寺尾です。

今回は、大腿骨頭壊死症について詳しくお話を伺うため、専門的に治療に取り組まれている黒田先生にご出演いただきました。
普段はクリニックで撮影することが多いのですが、今回は少し雰囲気を変えて、新橋にある「ワイン蔵TOKYO」さんに場所をお借りしています。

大腿骨頭壊死症という病気は、整形外科の中でも比較的珍しく、名前を初めて聞く方もいらっしゃると思います。
一方で、発症すると若いうちから股関節の状態が大きく変わり、場合によっては人工股関節が必要になることもあります。

今回はまず、大腿骨頭壊死症とはどのような病気なのか、どのような方に起こりやすいのか、これまでどのような治療が行われてきたのか、さらに現在研究や治療が進められている骨内への細胞治療について整理していきたいと思います。

大腿骨頭壊死症とはどのような病気なのか

大腿骨頭とは、太ももの骨である大腿骨の一番上にある丸い部分で、骨盤と組み合わさって股関節を作っています。

大腿骨頭壊死症では、この大腿骨頭への血流が障害されることで骨が弱くなり、時間の経過とともに大腿骨頭が潰れてしまうことがあります。
初期には骨の形が保たれていても、壊死した範囲に体重がかかり続けることで徐々に圧潰が進み、最終的には変形性股関節症のような状態になることがあります。

ここまで進行すると、痛みが強くなったり、股関節の動きが悪くなったりし、人工股関節置換術が必要になるケースもあります。
大腿骨頭壊死症の難しいところは、比較的若い年代でも発症することです。
若いうちに人工関節が必要になれば、その後の長い人生の中で人工関節の入れ替えを検討しなければならない可能性も出てきます。

そのため、できるだけ大腿骨頭が潰れる前に発見し、自分自身の関節を残せないかということが、長年研究されてきた大きなテーマになっています。

ステロイド治療や飲酒との関係

大腿骨頭壊死症については、いくつかのリスク因子が知られています。

代表的なものとして挙げられるのが、病気の治療などでステロイドを使用している場合と、習慣的に多量のアルコールを摂取している場合です。

もちろん、ステロイドはさまざまな病気の治療に欠かせない薬であり、必要があって使用されている方も多くいらっしゃいます。
そのため、「ステロイドを使っているから悪い」という話ではありません。

アルコールについても同様です。今回の撮影場所がワインのお店ということもあり、お酒の話にもなりましたが、通常の範囲で楽しむ程度の飲酒まで一律に問題になるという話ではありません。

一方で、度数の高いお酒を含め、多量の飲酒を習慣的に続けている方では、大腿骨頭壊死症との関連が指摘されています。

今回も、「お酒は絶対に飲んではいけない」という話ではなく、飲むのであれば量を考えながら楽しむことが大切ですね、という話になりました。

大腿骨頭壊死症の標準的な治療

では、大腿骨頭壊死症が見つかった場合、これまではどのような治療が行われてきたのでしょうか。
病気が進行し、大腿骨頭の圧潰や股関節の変形が強くなった場合には、最終的な選択肢として人工股関節置換術があります。

人工股関節は非常に優れた治療ですが、問題になるのは大腿骨頭壊死症が若い方にも起こることです。

人工関節は一度入れれば一生交換不要とは限りません。
長く使用することで摩耗やゆるみなどが起こり、将来的に再置換手術が必要になる可能性があります。そのため、20代、30代といった若い年代の患者さんでは、可能であれば人工関節になる時期を少しでも遅らせたいと考えます。

そこで行われてきたのが、自分自身の股関節を残すための関節温存手術です。

日本では、骨切り術という治療が発展してきました。
骨の一部を切って大腿骨頭の向きを変えることで、壊死している部分に直接体重がかかりにくい状態を作ります。

一方、海外では骨に穴を開けて再生を促す方法や、骨を移植する方法なども行われています。

同じ大腿骨頭壊死症であっても、日本と欧米では発展してきた治療方法に少し違いがあるというのも、この病気の特徴の一つです。

非常に高度な「血管柄付き骨移植」という治療

今回の対談では、以前行われていた血管柄付き骨移植についても話題になりました。
これは、自分自身の健康な骨を、血液が流れる血管をつけたまま患部へ移植する手術です。

単純に骨だけを移植するのではなく、動脈や静脈も一緒に移植し、顕微鏡を使って血管をつなぎます。
血流を保った状態で骨を移植できるという特徴がありますが、その分、非常に高度な技術が求められます。

整形外科だけでなく、血管をつなぐ技術を持つ形成外科の医師と協力して行うこともあり、手術時間も長くなる治療です。

現在では国内で行っている施設はかなり限られているのではないかという話もありましたが、それだけ昔から「どうすれば人工関節にせず、自分の骨を残せるのか」が考え続けられてきたということでもあります。

大腿骨頭壊死症は指定難病の一つです

大腿骨頭壊死症は、厚生労働省の指定難病となっている整形外科疾患の一つです。
そのため、研究班が組織され、診断や治療についての研究が行われ、ガイドラインなども整備されています。
また、指定難病の医療費助成の対象として認定された場合には、医療費の自己負担について支援を受けられる制度があります。
治療そのものだけでなく、長期的に病気と付き合っていく患者さんの負担をどのように減らしていくかということも重要です。

ただ、私たち整形外科医として一番考えたいのは、できるのであれば病気の進行を抑え、人工関節になるまでの期間を延ばしたり、人工関節を避けられる可能性を高めたりすることです。

そのために、現在もさまざまな関節温存治療の研究が続けられています。

骨に穴を開けて再生を促す「骨穿孔術」

海外などで行われてきた治療の一つに、骨穿孔術(ドリリング)があります。
これは、壊死した大腿骨頭に向かって骨に穴を開ける治療です。

穴を開けることで出血を起こし、周囲から細胞などが集まってくることを利用して、患者さん自身が持っている修復能力を引き出すことを期待します。

実は、この考え方自体は股関節だけに特別なものではありません。
膝の軟骨損傷などでも、限られた範囲の病変に対して骨に穴を開け、骨髄からの出血や細胞の流入を利用して修復を促す治療が行われることがあります。
大腿骨頭壊死症では、それと似た考え方を大腿骨頭の内部で行うわけです。

ただし、壊死している範囲が広い場合などには、穴を開けるだけでは十分な結果が得られないことがあります。
そこで、「穴を開けるだけではなく、再生に関わるものを一緒に入れたらどうなのか」という研究が進められてきました。

骨の中へ細胞を届けるという考え方

現在、黒田先生のクリニックでは、骨穿孔術に加えて、再生に関わる細胞を骨の中へ投与する治療にも取り組まれています。

従来のドリリングでは、穴を開けることで患者さん自身の修復能力を利用します。
しかし、そこへさらに細胞を届けることで、修復に関わる細胞の数を増やし、より良い環境を作ることができないかという考え方です。

以前には、FGFと呼ばれる成長因子を用いた研究や治験も行われていました。
一定の結果は得られたものの、最終的に保険適用までには至らなかったとのことでした。

それでも、大腿骨頭壊死症に対して「人工関節になるまで待つ」のではなく、早い段階で何かできないかという考え方は現在も続いています。
その一つとして、骨穿孔術と細胞治療を組み合わせる方法が研究・実施されているということです。

細胞治療というと、関節の中に注射するイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし、大腿骨頭壊死症では問題が起きている場所が骨の内部です。

そのため、治療する場所に合わせて、細胞をどこへ届けるのかという考え方も変わってきます。

若い患者さんの関節を、できるだけ残すために

大腿骨頭壊死症の治療を考えるうえで、非常に大きなテーマになるのが関節温存です。

人工股関節は、痛みを改善し、生活を大きく変えることができる非常に優れた治療です。
その一方で、若い患者さんの場合には、その先の数十年まで考えて治療を選ぶ必要があります。

大腿骨頭がまだ潰れていない早い段階であれば、骨切り術や骨穿孔術など、自分自身の関節を残すための選択肢を検討できる場合があります。

そして現在では、その骨穿孔術に細胞治療を組み合わせるなど、新しい方法も研究されています。

大切なのは、「新しい治療だから良い」「人工関節だから悪い」と考えることではありません。

病気がどの段階なのか、大腿骨頭がどの程度保たれているのか、壊死の範囲はどのくらいなのか、年齢や生活状況を含めて考え、その方にとってどの治療が妥当なのかを見極める必要があります。

大腿骨頭壊死症は、早い段階では治療の選択肢が限られている一方で、関節を残すための研究が長年続けられてきた病気でもあります。

今回の動画では、その最前線に携わる黒田先生に、さらに詳しくお話を伺いました。

続きは後編でご紹介します。

※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。

何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

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