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PRP治療とは?効果・費用・デメリット・幹細胞治療との違いを専門医が徹底解説

2025年10月15日(水)

こんにちは。お茶の水セルクリニックの寺尾です。
近年、PRP(多血小板血漿)治療に関するお問い合わせが増えています。
当院は再生医療のなかでも幹細胞治療を主軸にしていますが、症状や目的に合う場合に限りPRPも実施しています。
この記事では、PRPの仕組みを解説して、期待できることと難しいこと・デバイス(作製方法)の違い・適応と治療の流れを、分かりやすく整理しました。

PRP治療とは ― 再生医療の基本を知る

PRP治療(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)は、患者さん自身の血液から「血小板」という成分を濃縮して抽出し、それを患部に注射して利用する治療法です。
血小板には、出血を止める働きのほかに「成長因子」と呼ばれる修復を促す物質を放出する力があり、ケガや炎症をきっかけに体内で自然に行われている修復過程をサポートします。
この性質を医療的に応用したものがPRP治療です。

歴史的に見ると、その原理は1950年代には考えられ、1970年代から整形外科・形成外科を中心に臨床応用が始まりました。
近年は特にスポーツ分野での利用が注目され、プロアスリートがPRP注射を受けて競技に復帰した事例が報道されたことで一般にも広がりました。
現在では整形外科領域をはじめ、美容医療や歯科など幅広い分野に応用されており「自分の血液を使う比較的安全な再生医療」として一定の認知を得ています。

PRP

お茶の水セルクリニックでもPRP治療を行っていますが、あくまで治療選択肢の一つとして位置づけています。
幹細胞治療のように「新しい細胞を補充する」ものとは異なり、PRPは「細胞が修復を始める合図を出す役割」に特化しているからです。
この点を理解していただくと、PRP治療が持つ特徴と限界がより分かりやすくなります。

血小板が果たす役割 ― PRPの仕組みを詳しく解説

PRP治療を理解するためには、血小板の働きを知ることが不可欠です。
血液には赤血球・白血球・血小板といった細胞が含まれています。

そのうち血小板は非常に小さな細胞で、骨髄にある巨核球(きょかくきゅう)という大きな細胞から生まれます。血小板は怪我をした際に傷口へ集まり、出血を止めると同時に「修復の開始信号」を発するのが大きな役割です。
血小板の中には「顆粒(かりゅう)」と呼ばれる袋があり、その中に成長因子や炎症をコントロールする物質が含まれています。
傷ついた場所に到着すると、血小板はこれらの物質を一気に放出します。
その結果、周囲の細胞に「修復を始めなさい」という指令が伝わり、マクロファージと呼ばれる細胞や修復に関与する細胞が集まってきます。
このプロセスが炎症の調整や古い組織の除去を経て、最終的に組織修復につながるのです。

PRP治療は、この自然の仕組みを利用します。
血液から血小板を濃縮して患部に直接投与することで、体の自然治癒力を後押ししようという発想です。
ただし、PRP自体が組織を新しく作るわけではありません。
あくまで「修復を始める合図」を強めるだけなので、効果は主に「痛みの軽減」「炎症の抑制」です。
臨床研究でも「痛みが数か月和らぐ」「炎症が一時的に落ち着く」といったデータが多く報告されています。

効果とデメリット ― PRP治療の現実的な評価

PRP治療の最大のメリットは、患者さん自身の血液を使うため安全性が高い点です。
免疫拒絶や感染リスクが低く、日帰りで受けられる点も魅力です。
また、保存療法(リハビリや薬物治療)だけでは改善が難しい痛みに対して、追加的な手段として期待できます。

一方で、PRP治療には限界もあります。
血小板はあくまで「修復を促す信号」を出すだけなので、修復を担う細胞そのものが少ない関節内では効果が十分に発揮されにくいことがあります。
特に変形性膝関節症が進行して関節内の細胞が減っている場合は、PRPを投与しても一時的に痛みを抑える程度にとどまることが少なくありません。
また、効果の持続期間も永続的ではなく、数か月から半年程度で症状が戻ってくるケースも見られます。

このように、PRP治療は「魔法の治療」ではなく、効果と限界を正しく理解して受けることが大切です。適切なリハビリや生活習慣の改善と併用して初めて、症状の緩和や生活の質の改善につながります。

PRPと幹細胞治療との違い

PRP治療としばしば比較されるのが幹細胞治療です。
両者は再生医療に分類されますが、役割が大きく異なります。
PRPが「修復を始める信号」を出すのに対し、幹細胞治療は「実際に組織を作る細胞そのもの」を補うことが目的です。

幹細胞治療では患者さんの脂肪や骨髄から幹細胞を採取し、加工して関節などに投与します。
幹細胞は多様な細胞に分化できる能力を持ち、組織の再生を担う可能性があります。
そのため「進行した関節症」や「長期的な修復を目指すケース」では幹細胞治療のほうが適している場合があります。

お茶の水セルクリニックでは、患者さんの状態に応じて「保存療法 → PRP → 幹細胞治療」という段階的なステップを推奨しています。
これは「効果とリスクのバランス」を考えたアプローチであり、患者さんにとって無理のない治療選択をサポートするためです。

PRP治療の方法・種類・費用

当院では、患者さんの目的や状態に合わせて3種類のPRPデバイスを使い分けています。
※費用は全てお茶の水セルクリニックの価格になります

  • ACP(エントリーモデル)
    少量の採血(約15ml)から作成し、比較的負担が少なく導入しやすく、費用は110,000円(税込)

  • GPS®III(中濃度モデル)
    約60mlの採血で作成し、高濃度の血小板を含む。作用が強く、費用は165,000円(税込)

  • APS(炎症抑制特化モデル)
    GPS®IIIをさらに加工して炎症を抑える効果を強めたもので、費用は330,000円(税込)

このように、使用するデバイスや血液量によって効果や費用に違いがあります。
単純に「PRP注射を打てば良い」というものではなく、「どの目的で」「どの程度の効果を期待するのか」を医師と共有することが重要です。

まとめ ― PRP治療を検討される方へ

PRP治療は「体に備わる自然治癒力を後押しする治療」であり、特に関節や腱の痛みに悩む方にとって有効な選択肢の一つです。
ただし、万能ではなく、効果の限界や持続性について正しく理解して受けることが大切です。
当院では、まずは保存療法を基本とし、それでも改善が難しい場合にPRP治療、さらに必要なら幹細胞治療へと進む段階的な治療方針を取っています。

膝や肩の痛みでお悩みの方、手術は避けたいが少しでも痛みを和らげたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。

※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。

何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

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