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【炎症を抑えると手術は回避できる?】—院長のブログ

2020年11月13日(金)

興味深い論文をみかけたので紹介したいと思います。

 

Schieker, M., Conaghan, P. G., Mindeholm, L., Praestgaard, J., Solomon, D. H., Scotti, C., … & Ridker, P. M. (2020). Effects of Interleukin-1β Inhibition on Incident Hip and Knee Replacement: Exploratory Analyses From a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. Annals of Internal Medicine.

 

インターロイキン1β(IL-1β)という物質を抑制することで、変形性関節症の方が

人工関節置換術を受ける割合が低下したという内容の論文です。

 

IL-1βは炎症性サイトカインと呼ばれる物質で、体内の色々な細胞が生産します。

IL-1βが細胞に働きかけると、炎症を起こし発熱などの反応を引き起こします。

このIL-1βの働きを抑える薬と使うことで、人工関節置換術に至る確率が低下するとのことです。

 

幹細胞は抗炎症性の細胞と呼ばれています。

余分な炎症を抑えて、組織の修復する細胞だと考えられています。

炎症性サイトカインを抑制することで手術に至る確率が下がるのであれば、

もしかしたら、幹細胞を関節の中に注入することでも、手術に至る確率を下げられるかもしれません。

 

今のところ、幹細胞治療で変形が進まないようになるということや、人工関節置換術に至る

確率が下がるという報告は見たことがありません。

ですが、幹細胞に関節の軟骨を保護する作用があるといった報告は散見しています。

 

幹細胞は単に変形した関節を治療するために使えるだけでなく、変形の進行を抑えるなどの

予防的な使い方もできるのかもしれません。

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