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【脂肪由来幹細胞治療の効果についてのRCT】―院長のブログ

2020年11月18日(水)

今日は2019年に発表された論文で、変形性膝関節症に対する脂肪由来幹細胞の効果について研究したものを

紹介したいと思います。

 

Freitag, J., Bates, D., Wickham, J., Shah, K., Huguenin, L., Tenen, A., … & Boyd, R. (2019). Adipose-derived mesenchymal stem cell therapy in the treatment of knee osteoarthritis: a randomized controlled trial. Regenerative medicine14(3), 213-230.

 

この論文はRCT(Randomized Controlled Trial)という手法で研究されたものです。

日本語ではランダム化比較試験と言い、客観的に治療効果を評価することを目指した

研究方法の1つになります。

論文の中では、1億個程度の幹細胞を1回投与した群、2回投与した群、投与しない群で比較をしていました。

 

結論として、以下のようなことが書かれていました。

・深刻な有害事象(副作用)はなかった

・脂肪由来幹細胞で治療をした群では、痛みや機能が顕著に改善した。(投与後12か月)

・1回細胞を投与した群の30%で軟骨摩耗が進行した。

・2回細胞を投与した群では89%で軟骨の改善もしくは進行抑制が認められた。

・2回細胞を投与した群のみで軟骨の改善が確認できた。

 

当院では基本的に細胞を1回投与する治療を行っています。

それでも軟骨が改善しているので、この論文の結果とは少し異なる結果になっています。

もしかしたら、リハビリテーションの差によるものかもしれません。

この論文では1回目の投与では松葉杖で体重をかけない生活を4週間送り、

2回目の投与後は体重をかけて生活するとことにしていました。

当院では、細胞を注入し10分休んだ後は、通常の生活に戻ってもらっています。

注入直後から、細胞に圧力が加わっている状況になります。

軟骨が修復するためには、ある程度は体重をかける必要があるのかもしれません。

私が以前に所属していた研究室の同僚が行った研究でも、軽い圧力と摩擦を加えることで、

軟骨組織ができる量が増えるという結果が出ていました。

細胞のかかる物理的な刺激を適切にコントロールすることは、細胞治療にとって重要だと

益々思うようになりました。

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