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当院が幹細胞治療の点滴に1時間半かける理由

2025年10月23日(木)

こんにちは、お茶の水セルクリニックの寺尾です。

当院では、フレイル慢性疼痛脊髄損傷などの病気に対して幹細胞の点滴治療を行っています。
幹細胞を点滴バッグに入れて、ポタポタと血管の中に入れていく治療法です。

実際に治療を受けられた患者さまから「点滴の時間が長いですね」「他のクリニックより時間がかかりますね」というお声をいただくことがあります。

確かに、点滴を受けている時間は決して短くはありません。
ベッドで横になっている時間も長くなりますし、「なぜこんなに時間がかかるのだろう?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし実は、この点滴時間の長さには、患者さまの安全を守るための大切な理由があるのです。
今回は、なぜ当院が時間をかけて点滴を行っているのか、その医学的な背景と理由をわかりやすくご説明します。

当院の点滴時間は約1時間半

お茶の水セルクリニックでは、幹細胞治療の点滴に約1時間半の時間をかけています。

「1時間半」と聞くと、確かに長く感じられるかもしれません。
他のクリニックでは30分程度で投与を終えるところもあると聞いています。
中には「早く終わる方が便利だし、体への負担も少ないのでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかし、当院では開院当初から「1時間以上かけてゆっくり落とす」というスタンスを頑なに貫いています。
それには、患者さまの安全を第一に考えた、医学的に重要な2つの理由があります。
一つは身体への物理的な負担を減らすため、もう一つはアレルギー反応のリスクを最小限にするためです。

それぞれについて、詳しくご説明していきます。

理由1:身体への負担を最小限にするため

一つ目の理由は、身体への負担を大きくしないためです。

まず、幹細胞がどのようなものかを簡単にご説明します。
幹細胞は一つ一つが粒状になった細胞です。
点滴で血管の中に入れると、この粒状の細胞が血液の流れに乗って全身を巡っていきます。

ここで重要なのが「血管の太さ」と「幹細胞の大きさ」の関係です。

私たちの体の中には、太い血管から毛細血管という非常に細い血管まで、様々な太さの血管が張り巡らされています。
特に毛細血管は髪の毛よりもずっと細く、人間の体の中で最も細い血管です。

幹細胞と毛細血管の一番細い部分を比べると、実は毛細血管の方が細いのです。

幹細胞が毛細血管を通ろうとすると、一時的にギュッと詰まってしまう現象が起こります。
これは、太めのものが細い通路を通ろうとする時に起こる自然な現象です。

ただし、ここで安心していただきたいのは、幹細胞には柔軟性があるということです。
幹細胞は硬い球のようなものではなく、形を変えることができます。
そのため、一時的に詰まっても、しばらくすると自然に形を変えてスルッと抜けていきます。
そのため、基本的には大きな心配はいりません。

しかし、問題は「速度」にあります。

もし急速に大量の幹細胞を一気に投与してしまうとどうなるでしょうか?
全身の広い範囲で、同時に多くの毛細血管に幹細胞が引っかかってしまう可能性があると考えられます。
これは体にとって負担になる可能性があるのです。

一方、ゆっくりと時間をかけて少しずつ投与すれば、先に入った幹細胞が形を変えて抜けていく時間を十分に確保できます。
つまり、幹細胞が無理なくスムーズに全身に行き渡るようになるのです。

これが、当院がゆっくり時間をかけて点滴を行う一つ目の理由です。
体への物理的な負担を最小限にし、安全に幹細胞を届けるための配慮なのです。

理由2:アナフィラキシーショックのリスクを減らすため

二つ目の理由は、アナフィラキシーショックのリスクを最小限にするためです。
幹細胞治療の点滴には、幹細胞だけでなく、場合によって様々な薬剤を混ぜることがあります。

ヘパリンという薬剤について

例えば「ヘパリン」という抗凝固剤を使用するケースがあります。

ヘパリンは、血液をサラサラに保つための薬剤です。具体的には以下のような働きをします

・細胞同士がくっつきにくくなる
・血栓ができにくくなる
・血液の流れがスムーズになる

このヘパリンを使用することで、幹細胞が血液の中で固まらず、サラサラと流れやすくなります。
その結果、幹細胞が血管に詰まることなく、治療が必要な患部にもしっかりと届きやすくなるという効果が期待できます。

薬剤投与で気をつけるべきこと

しかし、どんな薬剤を使用する場合でも、私たち医療者が常に念頭に置いておかなければならないのが「アナフィラキシーショック」のリスクです。
アナフィラキシーショックという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
これは強いアレルギー反応のことです。

アナフィラキシーショックの特徴としては

・非常に強いアレルギー反応である
・食べ物や薬など、様々なものが原因で起こり得る
・重症の場合は呼吸困難や血圧低下など命に関わることもある
・だからこそ、細心の注意が必要

実は、アナフィラキシーショックは、食事の成分からでも起こってしまうことがあります。
つまり、何を使っていても、どんな治療でも一定のリスクは存在するということです。

ただし、点滴で薬剤を直接血管内に入れる場合は、口から摂取する場合と比べて体内への吸収が速いため、より一層の注意が必要になります。

投与速度が症状に影響する

ここで重要なポイントがあります。
実は、アナフィラキシーショックは「薬剤が体内に入る速度」によって症状の出方が変わると医学的に言われているのです。

速く投与する場合:強い反応が出やすい傾向がある
ゆっくり投与する場合:反応が出にくく、万が一出ても症状が比較的軽い傾向がある

これは、体が急激な変化に対応しきれないことが原因だと考えられています。

ゆっくりと時間をかけて投与することで、体が少しずつ薬剤に慣れていくことができます。
また、万が一何か反応が出始めた場合でも、すぐに点滴を止めて対処することができます。

当院では、このような理由から、ゆっくりと時間をかけて投与することで、アレルギー反応のリスクを可能な限り減らし、万が一の場合でも症状を最小限に抑えられるよう配慮しています。

安全な治療が何よりも大前提

お茶の水セルクリニックでは「安全性」を何よりも大切にしています。

幹細胞治療は、患者さまの体を治すための、より良い生活を取り戻すための治療です。
だからこそ、治療の効果はもちろんのこと、安全に治療を受けていただくことが大前提だと当院では考えています。

上記でご説明した2つの理由

  1. 身体への物理的負担を減らすため
    幹細胞がスムーズに全身に行き渡るよう、時間をかけて投与する
  2. アナフィラキシーショックのリスクを減らすため
    薬剤によるアレルギー反応を最小限に抑えるため、ゆっくり投与する

これらの安全性への配慮から、当院では点滴に約1時間半という時間をいただいています。
確かに、治療時間が長いと感じられるかもしれません。ベッドで横になっている時間も長くなります。
しかし、この時間は決して無駄な時間ではなく、患者さまの体を守るための、とても大切な時間なのです。

他のクリニックで治療を受けられる場合も

もし、お茶の水セルクリニック以外の他のクリニックで幹細胞治療を受けられることがある場合も、可能であれば「できるだけゆっくりした速度で点滴を受けたい」と医師やスタッフにお伝えいただくことをお勧めします。

点滴の速度は、実は患者さまの安全性に大きく関わる重要なポイントです。
ゆっくりとした速度で投与することで、より安全に治療を受けられる可能性が高まると私たちは考えています。

患者さまへのメッセージ

お茶の水セルクリニックは「安全で効果があり、しかも多くの方に広まる再生医療」をコンセプトに掲げています。
再生医療は、まだまだ新しい分野の医療です。
だからこそ、一つ一つの治療を丁寧に、安全に行っていくことが何よりも重要だと考えています。

せっかく受けていただく大切な治療ですから、効果だけでなく、安全性にも十分配慮しながら受けていただくことが大切です。

点滴時間が長いことに「なぜだろう?」と疑問を感じていた方、「早く終わらないかな」と思っていた方も、この記事で理由をご理解いただけたら幸いです。

当院では、患者さま一人一人に安心して治療を受けていただけるよう、これからも安全性を第一に考えた医療を提供してまいります。
治療について、点滴時間について、その他どんなことでも、ご不安やご質問がございましたら、どうぞお気軽にスタッフにお声がけください。

※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。

何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

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