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再生医療が高額な理由

2026年06月19日(金)

こんにちは、お茶の水セルクリニック院長の寺尾です。

今回は、患者さんからもよくいただく質問の一つである、「再生医療はなぜ高いのか?」というテーマについてお話ししたいと思います。

再生医療や幹細胞治療に興味はあるけれど、費用を見て驚かれる方は少なくありません。
「保険診療に比べると高い」
「なぜここまで費用がかかるのか」
「将来的に保険で受けられるようになるのか」
こうした疑問を持たれるのは、とても自然なことだと思います。

再生医療が高額になる理由は、一つではありません。
自費診療であること、細胞を扱うために培養や管理に大きなコストがかかること、そして保険診療に移行するまでの制度上の難しさなど、いくつかの要素が重なっています。

今回は、その背景をできるだけわかりやすく整理してみたいと思います。

保険診療と自費診療では、患者さんの負担の仕組みが違う

日本には、国民皆保険制度があります。
多くの治療や薬は保険診療として受けることができ、患者さんは医療費全体のうち一部を自己負担する形になっています。

たとえば、3割負担の方であれば、実際にかかっている医療費の3割を窓口で支払い、残りは保険によってまかなわれます。
高齢の方では、1割負担や2割負担になることもあります。

一方で、再生医療や細胞治療の多くは、現時点では自費診療・自由診療として提供されています。
自費診療では、保険が使えないため、治療にかかる費用を原則として患者さんご本人に全額負担していただく形になります。

この「負担の割合が違う」という点だけでも、保険診療と比べると再生医療は高く感じやすくなります。

つまり、再生医療が高額に見える背景には、治療そのものの価格だけでなく、保険が使えるかどうかという制度の違いが大きく関係しているのです。

自費診療では、医療機関ごとに価格が異なる

自費診療では、治療費を各医療機関がそれぞれ設定します。
そのため、同じように「幹細胞治療」と呼ばれるものであっても、医療機関によって価格に差が出ることがあります。

実際に、1回の治療で数百万円かかるケースもあります。
一方で、お茶の水セルクリニックでは、なるべく多くの方に再生医療を選択肢として考えていただけるよう、価格をできるだけ抑える努力をしてきました。

とはいえ、それでも一定以上の金額になってしまうのが現実です。
その理由として、細胞治療にはどうしても避けられないコストがあります。

幹細胞治療では、細胞を採取し、培養し、安全性を確認し、治療に使える状態まで整える必要があります。
これは、薬を大量に製造して流通させる一般的な医薬品とは異なり、患者さん一人ひとりに合わせて進める、オーダーメイドに近い治療です。

そのため、設備、人件費、培養に必要な材料、品質管理など、多くの工程とコストがかかります。

細胞治療は、労働集約的な治療です

再生医療は、非常に先端的な医療というイメージがあるかもしれません。
もちろん、細胞を扱うための技術や設備は高度なものです。

ただ、それと同時に、細胞治療はとても労働集約的な側面を持っています。

※労働集約的とは
機械だけで大量に自動生産するのではなく、人の手や管理、確認作業が多く必要になるという意味です。

細胞は生きたものです。
そのため、培養の過程では、決められた環境の中で適切に管理し、細胞の状態を確認しながら慎重に進める必要があります。

当院の培養の過程はこちらをご覧ください

細胞を安全に培養する細胞培養加工室(CPC)の紹介

また、細胞を扱うための材料や試薬には輸入品も多く、為替や原材料費の影響を受けることもあります。
培養に必要なものの価格が上がれば、それをまったく治療費に反映しないまま続けることは難しくなります。

できる限り費用を抑えたいという気持ちはあります。
しかし、安全性や品質を保ちながら治療を提供するためには、どうしても下げきれないコストがあるのです。

なぜ再生医療は保険診療にならないのか

「それなら、再生医療も保険診療になればよいのではないか」と思われる方も多いと思います。

たしかに、保険診療になれば、患者さんの窓口負担は大きく下がる可能性があります。
たとえば現在、自費で88万円(税込)の治療があるとして、仮に保険診療になり3割負担となれば、単純計算では自己負担は24万円ほどになります。

さらに高額療養費制度の対象になれば、所得や年齢によっては、実際の自己負担がさらに抑えられる可能性もあります。

※高額療養費制度とは
医療費の自己負担が高額になった場合に、年齢や所得に応じた上限額を超えた分が支給される制度です。

ただし、再生医療が保険診療になるのは簡単ではありません。

保険診療として認められるためには、臨床研究や治験などを通じて有効性や安全性を示し、国の承認を得る必要があります。
その過程には、非常に大きな時間と費用がかかります。

通常の医薬品であれば、製薬会社が大量に薬を作り、多くの患者さんに使われることで投資を回収しやすい構造があります。
一方、細胞治療は患者さん一人ひとりに合わせたオーダーメイドに近い治療であり、大量生産して広く販売する従来型の薬とは構造が異なります。

そのため、企業が大きな予算をかけて保険収載を目指しにくい面があります。
これは、再生医療の効果がないから保険診療にならない、という単純な話ではありません。
制度や事業構造の面で、保険診療化までの道のりが難しいという側面があるのです。

保険診療になれば、医療費全体の問題も出てきます

保険診療になると、患者さんの自己負担は下がります。
これは患者さんにとって、とても大きなメリットです。

一方で、窓口で支払わない部分の医療費は、保険や公的財源によってまかなわれることになります。
つまり、患者さん個人の負担は減っても、医療費全体としては誰かが負担しているということです。

たとえば人工関節の手術では、医療費全体として数百万円かかることがあります。
患者さんの自己負担は高額療養費制度などによって抑えられますが、その残りは公的な仕組みで支えられています。

もちろん、必要な治療を受けやすくすることはとても大切です。
一方で、日本全体の医療費が増え続けている中で、どこまでを保険診療として支えるのかという問題は、簡単には答えが出ないテーマです。

再生医療についても、もし適切なタイミングで使うことで人工関節の手術を先延ばしにできたり、手術に至らずに済む方が増えたりするのであれば、患者さんにとっても医療財政にとっても意味のある選択肢になる可能性があります。

ただ、そのためには、どのような方に本当に適しているのかを慎重に見極めていく必要があります。

価格には、医療機関ごとの考え方も反映されます

再生医療の価格は、医療機関ごとに異なります。
その背景には、培養コストや設備、人件費だけでなく、各医療機関の考え方も反映されています。

治療費を決める際には、まず実際にかかるコストがあります。
そのうえで、どの程度の体制を整えるのか、どのようなサポートを行うのか、治療後のフォローをどこまで含めるのかによっても、価格は変わります。

また、細胞治療はまだ発展途上の医療でもあります。
安全性や効果については日々研究が進んでいますが、すべてが完全に明らかになっているわけではありません。
そのため、リスク管理や品質管理の体制を整えることも重要になります。

お茶の水セルクリニックでは、再生医療を特別な人だけが受けるものではなく、必要な方が選択肢として考えられる医療にしていきたいという思いがあります。
そのため、できるだけ価格を抑えながら、治療を受けやすい環境を作ることを大切にしてきました。

それでも、培養に使う材料費の上昇や為替の影響などもあり、簡単に価格を下げ続けることは難しい状況があります。

大切なのは、費用に見合う治療かどうかを見極めること

再生医療は、決して安い治療ではありません。
だからこそ、治療を受けるかどうかは慎重に考える必要があります。

大切なのは、
「高いから良い治療」
「安いから悪い治療」
と単純に判断することではありません。

その治療が自分の状態に合っているのか。
どの程度の効果が期待できるのか。
他の治療法と比べて、どのような位置づけになるのか。
手術やリハビリ、保存療法と比べて、どのように考えるべきなのか。

こうした点を整理したうえで、納得して選ぶことが大切です。

当院では、再生医療を無理にすすめるのではなく、まず現在の状態を確認し、治療の適応があるかどうかを丁寧に見極めることを大切にしています。

まずは「自分に必要な治療か」を知ることから

再生医療が高額になる背景には、自費診療であること、細胞を扱うための培養や管理にコストがかかること、保険診療化までの制度上の難しさなどがあります。

一方で、再生医療は、これまでの治療とは異なる可能性を持った治療でもあります。
だからこそ、費用だけを見るのではなく、自分の状態に合っているのかを知ることが大切です。

お茶の水セルクリニックでは、患者さん一人ひとりの状態を確認し、再生医療が適しているのか、他の治療を優先した方がよいのかも含めて、一緒に整理していきます。

治療を受けるかどうかは、その後に決めればよいことです。
まずは今の状態を知り、選べる治療の選択肢を理解することから始めていただければと思います。

※今回の内容は以下の動画でも見ることが可能です。

何かご不明な点等ございましたら、当院の公式サイトからお気軽にお問い合わせください。

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